正真正銘! アメリカの国民的スター
同年「愛のかげり」に代わってチャート首位に立ったのがドリー・パートンとケニー・ロジャースのデュエット曲「アイランド・イン・ザ・ストリーム(Islands In The Stream)」でした。カントリー歌手/ソングライターのドリー・パートンはもしかしたら日本ではアメリカほどの知名度はないかもしれません。ホイットニー・ヒューストンが歌った「オールウェイズ・ラヴ・ユー(I Will Always Love You)」の作者と言えば伝わるでしょうか。カントリーチャートを中心にヒット曲は数知れず。俳優としても「9時から5時まで(9 to 5)」や「マグノリアの花たち(Steel Magnolias)」といった映画で印象的な役を演じています。さらには実業家としてテーマパークを経営するなど、その活動は多岐にわたっていました。
アメリカン・コミックから抜け出たような容姿はゲイ男性の心を掴み、レパートリーに取り入れるドラァグクイーンも多いそうです。ロスのゲイバーで行われたドリーのそっくりさん大会に本人がお忍びで参加したという愉快なエピソードも。(*3)
また保守的なカントリーミュージック界にあって、早くから性的マイノリティーの人権擁護や同性婚への支持を表明してきた人でもあります。あるインタビューでは「私たち異性愛者と同様、同性カップルにだって結婚の惨めさを味わう権利があるでしょ(Why can’t they be as miserable as us heterosexuals in their marriages?)」とジョークを交えて語っています。(*4) さらにトランスジェンダー女性を描いた2005年の映画「トランスアメリカ(Transamerica)」に「Travelin’ Thru」という曲を提供し、反トランスジェンダー的なノースカロライナ州の「トイレ法(Public Facilities Privacy and Security Act)」にも異論を唱えました。(*5)
彼女の訃報が伝えられるや ポール・マッカートニー、ミック・ジャガー、ベット・ミドラー、シェール、シンディ・ローパー、ジェーン・フォンダ、シルヴェスター・スタローンなどエンタメ界の仲間はもちろん、チャールズ英国王、ヒラリー・クリントン、オバマ元大統領から なんとトランプ大統領までもが追悼のメッセージを出しました。真の国民的スターだったんですね。
そんな彼女のレパートリーの中で私が特に好きな曲は、1987年に盟友のリンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリスと製作したアルバム「トリオ(Trio)」に収められていた「ワイルドフラワーズ(Wildflowers)」。自由を追い求める自身の生き方を野生の花に重ねた、ドリーを象徴するような曲です。ここに歌詞の一部を紹介し追悼したいと思います。
“Just a wild mountain rose,needing freedom to grow
So I ran fearing not where I’d go
When a flower grows wild, it can always survive
Wild flowers don’t care where they grow”
ー山に咲く野生のバラは自由がなければ育たない
だから私は走り出したの どこへ行こうと怖くない
野生で育った花は いつだってたくましい
野生の花はどんな場所でも咲き誇るー (拙訳)
Wildflowers – Trio (Rhino Records Official YouTube Channel)

思い出深い作品の数々:筆者所有
*1 『Bonnie Tyler, an Enduring Ally and Voice of Queer Anthems, Dies at 75』 qMeet NL 2026.7.9
*2 『Holding out for a hero, and finding one in Bonnie Tyler』 ADVOCATE 2026.7.9
*3 『Dolly Parton entered a drag queen Dolly Parton lookalike contest – and lost』 NINE.COM 2011.5.25
*4 『Dolly Parton on same-sex marriage, children’s literacy and touring Down Under』 ABC 2017.10.13
*5 『10 times Dolly Parton cemented her status as an LGBTQ+ icon』 ADVOCATE 2026.8.25

