同性パートナーにも「移転費」を求める訴訟、9月8日に第1回公判。原告の松浦さんに独占インタビュー

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 国の雇用保険の制度である「移転費」が同性カップルに支給されなかった問題で、長崎県大村市の松浦慶太さんと藤山裕太郎さんが国を相手に行う訴訟の第1回公判が9月8日に行われることになりました。

審査請求でも「棄却」され

 「移転費」はハローワークの紹介などで、就職した人と親族に支給される引越し費用や交通費です。親族には事実婚を含みますが、松浦さんがパートナーを親族として申請したところ、25年1月にハローワークから支給しない旨の連絡があったということです。その後、国の制度に基づき審査請求をしましたが長崎労働局が4月、「処分は正当」として審査請求を棄却していました。

 松浦さんは兵庫県からパートナーの藤山さんの故郷である長崎県に引越し、生活しています。ふたりが同時に引越し生活することはとても大変だったと語り、ハローワークの移転費がいかに大切かを話していました。

過去、同性カップルに支給された制度も

 2024年3月には、犯罪に遭った被害者の遺族らが受け取れる公的な給付金制度の「犯罪被害者給付金制度」を同性パートナーが受け取れるか、が争われた訴訟で最高裁が同性カップルは「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に含まれ得る、と判断しています。

 これに伴い、超党派で作る「LGBTに関する課題を考える議員連盟」では、国の定める事実婚に関する規定で同性カップルも含まれる、と解釈されるものを各省庁から提出を求めるなど、大きな動きにつながりました。25年1月には、事実婚規定のある154の法令のうち、24の法令について、同性カップルも含まれる、とする解釈が各省庁から示されました。この中では、介護が必要になった人のパートナーも一緒に生活ができる「サービス付き高齢者住宅」の制度なども含まれるとされ、話題となりました。

 松浦さんらが問題にする「移転費」についても、24年5月の衆議院法務委員会で立憲民主党の山田勝彦議員が支給すべきと三浦靖厚生労働政務官に質問し「検討していきたい」と答弁がありました。

【速報】厚労省「同性カップル」を事実婚として認めず-雇用保険の移転費の支給で-

「ぜひ、傍聴で応援を」松浦さん

 9月8日の訴訟では松浦さんの陳述が予定されるなど、内容の濃いものになりそうです。松浦さんらは「ぜひ応援の傍聴に多くの方に来ていただきたいです」と話します。松浦さんの独占インタビューは下段に続きます。LGBT.jp編集部では、当日の様子などをレポートする予定です。

▼同性カップルにも雇用保険の移転費を!訴訟

期日:2025年9月8日(月)
場所:長崎地方裁判所(長崎市万才町9-26)
13:40傍聴券配布
14:00事前集会
15:00裁判開始
*終了後、弁護士控室で裁判内容の説明があります。

松浦さんと藤山さんの訴訟には弁護士費用など多額の費用が見込まれることから、寄付も募っています。

ゆうちょ銀行 記号17650 番号19204561
フジヤマユウタロウ

原告の松浦慶太さん独占インタビュー

ーいよいよ裁判です。この日までの思いを聞かせてください。
(松浦慶太さん)裁判という人生でなかなか経験することではないことに直面していて、現実感がなく不思議な感じです。裁判をするとなると、仕事に影響もあります。裁判費用もかかり、仮に勝訴をしても実質的にはマイナスです。しかし、この訴えが認められれば、法的保障から排除されてきた戸籍上同性のカップルに、その権利が拡充される突破口となる可能性があり、意義が非常に大きいものだと感じています。

ー同性カップルが移転費をめぐり訴訟をするのは初めてです。
(松浦さん)僕たちはまさに今回の問題に直面した当事者です。このことに問題意識を持っているLGBTQの人でも(移転費を不支給にされたという事実がないので)裁判に訴えることはできません。僕たちは世間に訴えることができるボールを持った状態です。また、この手続きの中で、私たちは全国で初めてとなる「夫(未届)」という住民票まで出していただきました。このような環境の中で、自分たちは社会にしっかりと声を上げて、同性のカップルが直面する実質的な不利益があることを訴えていく責務があると思っています。頑張っていきたいと思っています。

ーこの日本の社会をどんな社会にしたいですか?またどんな希望をLGBTQ当事者の皆さんに届けたいと思いますか?
(松浦さん)僕たちがめざすのは、マイノリティであっても、好きな人と好きな場所で暮らせる社会です。僕たちはパートナーの長年の希望であった故郷である長崎県へのUターンをしました。Uターンは、2人同時の退職と仕事探し、引越しが伴い、ハードルが高いです。そのような人生の転機に、社会保障の制度が使えないのは、同性のカップルはとても不利だと思いました。

「地元でパートナーと暮らす」という選択肢を持ってもいいんだという希望を、この裁判を通じて、LGBTQの当事者やこれからの若い世代の人に感じてもらえたら嬉しいです。

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