写真上 会見する園田裕史大村市長 (大村市HPより)
大村市の園田裕史市長は9月30日の定例記者会見で、今年5月、男性の同性カップルに男女の事実婚の関係性を示す「世帯主」と「夫(未届け)」と記載した住民票を交付した際に、「対応が妥当だったか」との問い合わせに総務省が「実務上の支障をきたす恐れがある」などと再考を求めたことに対して、「修正しない」との考えを明らかにしました。
対応の妥当には答えず、「実務上の支障きたす恐れがある」と再考促す
「対応が妥当かどうか」問い合わせた5月以降、大村市と総務省の事務レベルで複数回やり取りした結果、総務省は9月27日付の文書で、対応の妥当性には触れず、「住民票は公証資料であり、住民基本台帳法や最高裁判決で求められている『正確かつ統一的な記録』であることを前提として、各種社会保障などの手続きで活用されている」「夫(未届)」「妻(未届)」という続柄は「内縁の夫婦(事実婚)が《法律上の夫婦》と社会保障の面で同じ扱いを受けているので記載している」とし、社会保障の面で同じ扱いを受けていない同性カップルと内縁の夫婦の「続柄の記載」を同じにすると「実務上の支障をきたす恐れがある」として「改めてご判断いただきたい」との考えを伝えました。
園田市長「この機会を捉え、時代に合っていない事務処理要領を見直す検討を」
30日の会見で園田市長は「現場レベルでは実務上の支障はなく、同じような記載を検討している自治体も増え、パートナーシップ宣誓制度を導入している自治体も多く、議論になっている。事務処理要領の中身自体が、時代に合っていないのではないか。この機会を捉え、事務処理要領を見直す検討をお願いしたい」「社会保障制度の確認は住民票の記載のみで判断しない」などとして、「特段の修正などを行わない」との考えを示しました。
交付された松浦さん「心から安堵、市に感謝している」
市長の会見を聞いて「夫(未届け)」の住民票を交付された松浦慶太さんは、「心から安堵している。撤回されるのではないかという心配もあったが、また穏やかに暮らせる。一貫して毅然とした態度で僕たちの権利を守ってくれている大村市に感謝している。大村市に引っ越してきて良かった。心強く感じている」と話しています。
目的は「住民の福祉」として「正確な記載」求める決議は否決
また、総務省の回答が届いた9月27日、大村市の「みらいの風」会派の光山千絵、村上秀明、松尾祥秀の3市議が「住民票の正確かつ統一的な記載を求める決議案」を議長に提出しましたが、賛成少数で否決されました。議会では、「大村市より先に『パートナーシップ宣誓制度』を導入した長崎市では、住民票ではこのような記載をしていない」と決議案に賛同する声があった一方、「『正確かつ統一的な記載』は目的ではなく、目的は『住民の福祉』である」「すでに交付されているもの。水をさすことになる」などの反対意見も挙がり、結果、賛成7,反対16で否決されました。
こうした動きに、松浦慶太さんは「この話題が上がる度に胸が苦しくなる。いつまでそんな議論をするのか。この議論が市議会で上がる度に不幸せだと感じる。全国的にこの住民票の記載が広がるなか、そういう社会の空気を感知できておらず、とても低いレベルで議論しているように思う」と語っています。