写真上 参議院本会議での改正法採決(参議院HPより)
顧客や取引先が理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(カスハラ)から労働者を保護するため、全企業に対策を義務付ける改正労働施策総合推進法の一部改正が4日、参議院本会議で自民、公明、立憲民主各党などの賛成多数で可決、成立しました。
2020年に施行された同法は、すべての企業が、性的指向や性自認に関する侮辱・差別的言動や(営業から外されるなどの)「人間関係からの切り離し」などを含むハラスメント、および性的指向・性自認に関する(以下、SOGI)に関する「機微な個人情報」を勝手に第三者に暴露するアウンティングが社内で起こらないように努めることを義務付けました。SOGIハラとアウンティングの禁止が初めて法的に明記され、その防止に努めることが措置義務と定められました。
カスハラへの措置義務を企業に課す
今回の改正は、「職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境を害すること」、すなわちカスハラについての措置義務を各企業に課すことが新たに加わりました。
SOGIハラがカスハラに該当、就活生へのSOGIハラ防止が必要と明記
さらに、いわゆる「カミングアウト」の禁止や、強制・強要がパワハラに該当し得ること、性的指向・性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)がカスハラに該当し得ること、就活生に対するSOGIハラの防止が必要であることを、法に基づく指針に明記するとの付帯決議が可決されました。
「引き続き差別禁止法制定求めていく」とLGBT法連合会
国会での法案審議に向けてSOGIハラ対策の拡充・強化への問題提起や働きかけを精力的に行ってきた、一般社団法人 性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者に対する法整備のための全国連合会「略称:LGBT法連合会」は、「前回改正では、SOGIハラ対策が法制度に位置付けられたことにより、労災認定基準にSOGIハラが明記される、実際の認定事例が報じられる、裁判に波及するなど、広範な影響がみられた。今回改正が、社会におけるSOGIハラ対策のうねりを巻き起こし、当事者の人権尊重に向けた新たなスタートとなることを期待する」と同会の働きかけに呼応して与野党がSOGIハラ対策の強化に向けて積極的な議論を行い、結果として付帯決議に結実したことを評価しました。
同会は今後も、取り組みの強化に向けた働きかけや周知啓発を不断に進めるとともに、「性的指向・性自認による差別的な職場移動や退職勧奨、解雇などハラスメント対策だけではカバーしきれない差別的取り扱いへの対策の必要性を強調し、引き続き差別禁止法の制定を求めていく」としています。
参考 LGBT法連合会の声明