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戸籍上の性別変更を求めたトランスジェンダーの夫婦に対して、東日本の家庭裁判所が4日、2人ともに性別変更を認める判断を下しました。性同一性障害特例法には性別変更する場合、「現に結婚していない」という「非婚要件」があり、結婚している当事者の性別変更を認めるのは異例です。
昨年結婚し、今年同時に性別変更申し立て
朝日新聞によると、申立人は東日本在住でアルバイトのトランス男性(戸籍は女性)と公務員のトランス女性(戸籍は男性)で、昨年結婚しましたが今年5月、同じ日に性別変更を申し立てたところ、家裁は併合して審理を行いました。
特例法には、「18歳以上」(年齢要件)、「未成年の子がいない」(子なし要件)、「変更する性別の性器に似た外観を備えている」(外観要件)と「非婚要件」があります。
2人同時の性別変更で同性婚の状態が生じる可能性なく変更認める
家裁は4日の審理で、2人とも他の要件は満たすが、「非婚要件」に欠けると認めました。ただ、特例法の「非婚要件」の違憲性が問われた裁判で20年3月、最高裁が「異性間においてのみ婚姻が認められている現在の婚姻秩序に混乱を生じさせかねない等の配慮に基づくもの、、」として合憲という初めての判断を示したことを踏まえて、「非婚要件」が設けられた前提には、夫婦の一方の性別を変更すると「同性婚の状態」が生じ、現在の「婚姻秩序」に混乱を生じさせかねないという配慮があると指摘。そのうえで、2人の場合、同時に性別変更すれば、同性婚の状態が生じる可能性はなく、非婚要件を欠いていても変更を認めるのが相当であると結論付けました。
性別変更の家事審判には民事裁判のように対立する当事者がいないため、性別変更を認めた今回の判断は確定となり、同様の申し立てが広がる可能性があります。
特別法の厳しい要件を違憲とする司法判断相次ぐ
2003年に制定された「性同一性障害特例法」の厳しい要件に対しては、最高裁が「不妊化要件」について「違憲・無効」と判断(23年10月)、広島高裁が「外観要件」について「違憲の疑いがある」と判断(今年7月)するなど、その違憲性を指摘する司法判断が相次いでいます。
「非婚要件」についても20年5月、長年日本で暮らし、女性と結婚し、母国で性別変更した米国人のトランス女性エリン・マクレディさんが、日本で性別変更か結婚解消かを迫られ、裁判を起こすことを表明。今年7月には、結婚後に性別変更したトランス女性が戸籍上の性別変更を京都家裁に申し立て、離婚を強制する非婚要件は憲法違反と訴えています。
「非婚要件」は廃止・改正されるべき
今回の家事審判は、申立夫婦の法的性別変更は認められましたが、非婚要件の違憲性には判断を示しませんでした。京都産業大学の渡辺康彦教授(家族法)は、「法律の文言通りに解釈せず、無用な離婚を迫らなかった点は評価できるが、根幹の問題は残ったままだ」と指摘しています。
朝日新聞の記事に対し、自身もトランスジェンダーの仲岡しゅん弁護士は「そもそも、非婚要件はそれ自体がおかしいですね。早急に廃止・改正されるべきだと思います。他方で、異性愛者だったのに配偶者の性別移行によってその意に反して同性カップルになってしまう他方配偶者の利益にも配慮し、例えば、『配偶者の同意を得ている』などの条件を満たしていれば、性別変更が認められるべきではないかと思います」とコメントしています。
参考 朝日新聞