同性婚訴訟、「公平に声をすくい取り、公正な判断をする」最高裁長官が記者会見

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写真上 最高裁

今崎幸彦最高裁長官は3日の憲法記念日を前に記者会見し、同性婚など多様性についての憲法判断を巡る裁判に注目が集まることに対し、「当事者の主張にきちんと耳を傾けるべきであることは、他の裁判と変わらない。(原告と被告)両方の声を公平にすくい取り、公正な判断をする」と強調しました。
同性婚訴訟を巡っては全国5つの高裁で「違憲」判断が出されており、最高裁が来年にも統一判断を示すとみられています。
今崎長官は「新たな視点や論点をはらむことも多く、裁判官としての総合力が試される。各裁判官が主体的、自律的に識見を高めることが求められる」と話しました。

最高裁は性同一性障害で画期的な判決を下し、同性婚訴訟にも期待の声

最高裁は2023年にはトランス女性の経産省職員に対するトイレ使用制限などの扱いを不当だと判断し、大法廷で性同一性障害特例法の不妊化要件を違憲とする判断を下し、また、昨年3月には同性パートナーも犯罪被害者給付金支給法の「事実上婚姻関係と同様の事情にあったもの」に含まれると裁定するなど、画期的な判決を下し、同性婚訴訟についても公正な判断を期待する声が高まっています。

国会審議を待つのではなく人権侵害状況を速やかに救済する対応求められる

憲法記念日にあたり、朝日新聞は元最高裁判事で「同性婚と司法」の著書もある弁護士の千葉勝美さんに話を聞いています。
千葉弁護士は「同性婚を認めていない現行制度が『憲法24条に違反する』という判決が相次いでいます。国会での審議状況や国民的な議論を待つのではなく、この人権侵害状況を速やかに救済する対応が司法には求められているということを表しています。24条にいま光が当たる所以でしょう。24条は戦後の日本国憲法で新たにつくられた婚姻制度についての特別な規定です。戦前は『家』制度の下、婚姻は当事者の合意だけでは成立せず、戸主の同意が必要でした。24条1項で『家』制度からの決別を宣言し、2項で、1項の理念を生かした立法をするよう国会に求めたのです」

現行制度は憲法所極めて問題だという結論は出てくる

共同通信は法学者の長谷部恭男早大教授に5高裁の違憲判決について聞いています。
長谷部教授は「憲法24条は『婚姻は両性の合意』と言っているので、憲法をつくった人たちは同性婚を想定していなかった。ただ婚姻は愛する人と生活して助け合い、人生をなるべく長く過ごすための制度だから、同性を愛する人たちが自分たちにも制度を用意してほしいというのは自然なことだ。制度がないのは(法の下の平等を定めた)14条違反というのはよくわかる」「また13条の幸福追求権の否定だというのも理解できる。24条の助けを借りなくても、現行制度は憲法上極めて問題だという結論は出てくる」と語っています。5高裁の判決ポイントは以下の通り。

札幌高裁判決 同性婚の対策を急いで講じる必要がある

「同性間の婚姻を定めることは、国民に意見や評価の統一を求めることを意味しない。同性愛者は、日々社会生活において不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある」

東京高裁判決(1次) 社会的受容度は相当高まっているといえる

「同性間の人的結合関係に男女間の婚姻と同様の保護を与えることについて、否定的な考え方が国民一般に広く共有されている状況にあるとは言えず、むしろ社会的受容度は相当高まっているといえる。重要な法的利益の享受の可否につき本件区別が生じている状態を現在も維持することに合理的根拠があるとは言えない」

福岡高裁判決 同性婚への不安は法的な地位が明確にされて払拭できる

「同性カップルによる婚姻を法制度として認めることに対して否定的ないし消極的な意見は少なくないが、これらは新たな法制度の登場に対する不安や違和感によるものとみられるところ、このような不安は、同性カップルによる婚姻について法制度が整えられ、法的な地位が明確にされることで払拭される」

名古屋高裁判決 同性婚は家族観を否定することにはならず共生可能

「同性婚の法制化によって上記のような家族観(男女の人的結合関係を中核としてその間に生まれた子の保護・育成の機能を担うものという家族)を直ちに否定することにはならず、共生することは可能である」

大阪高裁判決 同性婚は憲法24条の理念に沿うもの

「もはや社会の倫理にも健全な社会道徳にも公益にも反しないとの社会的合意が形成されているというべき同性婚に対して冷静かつ寛容な態度を期待することは、個人より集団の利益を優先する明治民法の規定を廃し、かけがえのない個人を尊厳ある主体として重んじることを旨として家族制度を構築することを命ずる憲法24条の理念に沿うものといえる。同性婚に対する国民感情が一様でないことは、同性婚を法制化しないことの合理的理由にはならない」

参考 東京新聞
共同通信
朝日新聞

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